第23回 「不思議な形をした容器『樽形ハソウ』」
ハソウとは、液体を入れる胴部に1~1.5センチメートル程度の丸い孔をあけ、竹など筒状の用具を差し込んで、そこから液体を注ぐ容器です。主に古墳時代に使われ、多くは須恵器で作られています。須恵器は、古墳時代中頃、4世紀末から5世紀の前半頃に朝鮮半島から技術が伝わった焼き物で、ロクロの使用と窖窯での焼成が特徴です。色は灰色が多く、硬く焼き締まっています。
樽形ハソウは、樽を横に倒した形で、上部の中央に口を付け、胴部に孔をあけています。茨城県内での発見例は極めて少なく、本例はたいへん貴重な資料です。
大きさは、横の長さ19センチメートル、胴部の最大径17センチメートル、高さは口縁の先端部分を欠きますが、おそらく20センチメートル程度と思われます。中央には波状の文様を施し、胴部のほぼ中心に径1.5センチメートルの孔があけられています。自然釉の掛かり具合から、左側を下にして焼成したことが分かります。
樽形ハソウは、須恵器が生産され始めた5世紀代につくられました。本例は県内でも古い須恵器製品のひとつですが、この頃に県内で須恵器を生産した窯は発見されていません。当時の生産地は、大阪府や愛知県など一部の地域に限られていました。おそらく、これらの地域から運び込まれたと思われます。
この頃の須恵器は貴重品でした。そのなかでも稀少品である樽形ハソウの出土は、この地に力のある人が住んでいたことを伺うことができます。