里山調査において,鳥類,チョウ類,トンボ類を中心に専門員による調査を実施しました。この調査では,それぞれの生物についての種数を確認することが目的であり,トンボ類は,環境指標種調査の対象種も含み調査をしています。鳥類調査は,平成15年2月,6月に実施し,チョウ類・トンボ類調査は,平成15年7月下旬~8月上旬に実施しました。
鳥類
調査の結果,15目30科62種の鳥類が確認できました。
確認できた主な鳥類
主な生息環境
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種名
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水辺
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コサギ,チュウサギ,ダイサギ,アオサギ,ゴイサギ,マガモ,コガモ,クサシギ,バン,オオバン,カワセミ,オオヨシキリ,カイツブリ,カワウ,ケリ,タゲリ,タシギ,タマシギ,イカルチドリ |
林
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コゲラ,エナガ,カケス,シロハラ,ホトトギス |
広い範囲で見られる
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スズメ,ムクドリ,ツグミ,ヒヨドリ,ヒバリ,セッカ,アオジ,ウグイス,ハシブトガラス,オナガ |
概要
今回調査した地点は,谷津田やため池など水辺に関わる場所が多かったため,サギ類をはじめとする水辺に見られる鳥類は,ほとんどの場所で確認されている。ため池ではカモ類,湿地などではシギ・チドリ類が見られている。一方,カケス,エナガなどの森林性の鳥類も確認されているが,全体的に確認された地点は水辺の鳥類に比べてやや少ない。林の状態や規模が影響していることが考えられる。猛禽類は何ヶ所かで確認されており,餌とする動物が周辺にいることを示している。特に猛禽類は,その場所だけでなく,周辺の環境も利用しているため,全体的な里山環境の保全が必要である。
希少な鳥類として文献に記載のあるもの
種名
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文献
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イカルチドリ | 茨城県版レッドデータブック |
オオタカ | 全国版レッドデータブック,茨城県版レッドデータブック |
ケリ | 茨城県版レッドデータブック |
タマシギ | 茨城県版レッドデータブック |
チュウサギ | 全国版レッドデータブック |
チョウ類
調査の結果,1目7科36種のチョウ類が確認できました。
確認できた主なチョウ類
主な生息環境
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種名
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林縁
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ヒメジャノメ,コジャノメ,ヒメウラナミジャノメ,ダイミョウセセリ,オオチャバネセセリ,コチャバネセセリ,オオウラギンスジヒョウモン,メスグロヒョウモン,ウラギンシジミ,ゴイシシジミ,コミスジ,イチモンジチョウ |
林
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ゴマダラチョウ,ムラサキシジミ,オオムラサキ,ルリタテハ,サトキマダラヒカゲ,ヒカゲチョウ |
住宅地でも見られる
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ヤマトシジミ,ナミアゲハ,キアゲハ,クロアゲハ,アオスジアゲハ |
概要
チョウ類は,幼虫のエサとなる植物や成虫が生息する環境の有無が重要である。場所により確認された種数に差があり,最多が19種で最少が2種であった。環境が単調でなく,様々な環境要素がそろえば,それに応じて多様な植生が繁茂するため,生息するチョウ類も増加すると考えられる。
希少なチョウ類として文献に記載のあるもの
種名
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文献
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オオウラギンスジショウモン | 日本産蝶類県別レッドデータ・リスト茨城県版 |
オオムラサキ | 全国版レッドデータブック・茨城県版レッドデータブック,日本産蝶類県別レッドデータ・リスト茨城県版 |
ゴマダラチョウ | 日本産蝶類県別レッドデータリスト茨城県版 |
メスグロヒョウモン | 日本産蝶類県別レッドデータリスト茨城県版 |
トンボ類
調査の結果,1目7科19種のトンボ類が確認されました。
確認できた主なトンボ類
主な生息環境
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種名
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止水域
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ギンヤンマ,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,チョウトンボ,ウチワヤンマ |
小川
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オニヤンマ,ハグロトンボ |
水草の多い明るい池
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アジアイトトンボ |
概要
本調査では,ため池やハス田,水の流れが止まっている状態になっている河川では,止水域で見られるトンボ類が確認されている。チョウ類と同様に,環境が単調な場所は種数が少なくなる傾向があった。幼虫が生息する水辺だけでなく,成虫が餌を捕るための林や草地などの環境が隣接している必要がある。