法務省提唱啓発活動重点目標・啓発活動強調事項

 法務省の人権擁護機関では、毎年定める「啓発活動重点目標」のもと、「啓発活動強調事項」として掲げる18の項目を中心に、国民の皆さん一人一人の人権意識を高め、人権への理解を深めてもらうために、様々な人権啓発活動を実施しています。

令和7年度啓発活動重点目標~人権啓発キャッチコピー~

 法務省の人権擁護機関では、その時々の社会情勢や人権侵犯事件の動向を勘案して、年度を通じて特に重点的に啓発するテーマを定め、共通の目標の下に組織を挙げて人権啓発活動を展開しています。

人権啓発キャッチコピー「『誰か』のこと、じゃない。」

啓発活動重点目標・調査救済制度周知ポスター趣旨
 いじめや虐待、体罰、性犯罪・性暴力など、こどもが被害者となる事案が後を絶ちません。こどもの人権をめぐる状況は依然として深刻です。悩みを抱えながらSOSを発信できていないこどもに気付きを促し、その声に耳を傾け、必要な支援を行うことで、社会全体がその健やかな成長を後押ししていかなければなりません。引き続き、こどもが、権利を持つ一人の人間として最大限尊重される社会の実現を目指した啓発活動にしっかりと取り組みます。
 インターネット上の誹謗中傷や、差別を助長するような情報の発信といった問題の解消も、引き続き取り組むべき課題です。携帯電話会社と連携した人権教室の実施や、SNS事業者等と連携した啓発サイトの活用などにより、被害者にも加害者にもならない責任ある情報発信を行うためのインターネット利用のルールとマナーに関する効果的な啓発活動を行います。
 障害のある人に対する偏見や差別、障害のある人を排除しようとする優生思想は、あってはならないものです。また、外国人や性的マイノリティであることなどを理由とする偏見や差別も許されません。そして、それらが複合的に重なり、より深刻な事態を引き起こす場合もあります。多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受することができる共生社会の実現に向け、引き続き取組を推進していきます。
 社会には、様々な人権課題が依然として存在していますが、これらは決して、自分以外の「誰かのこと」、「自分には関係のないこと」ではありません。法務省の人権擁護機関では、本年度も、誰もが人権問題を自分や自分の身近な人の問題として捉え、互いに人権を尊重し、他人の人権にも配慮した行動をとることの大切さを意識するよう、「『誰か』のこと じゃない。」を啓発活動重点目標に掲げ、SNSを含むインターネットの積極的な活用、企業による人権尊重への取組に対する支援など、受け手を意識しながら、内容・方法共に工夫を凝らした各種啓発活動を幅広く、効果的に展開します。

令和7年度啓発活動強調事項

 法務省の人権擁護機関では、毎年その年度の「啓発活動重点目標」を定めるとともに、具体的な課題として、「啓発活動強調事項」を掲げ、人権啓発活動を実施しています。

■女性の人権を守ろう

 家庭や職場における男女差別、性犯罪・性暴力、配偶者・パートナーからの暴力、職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い(マタニティハラスメント)などの人権問題が依然として発生しています。誰もがお互いの立場を尊重して協力し合えるよう、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

■こどもの人権を守ろう

 いじめや虐待、体罰、性犯罪・性暴力などのこどもをめぐる人権問題は後を絶たず、依然として深刻です。こどもが一人の人間として、また、権利の享有主体として最大限に尊重される社会にするため、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

■高齢者の人権を守ろう

 高齢者に対する介護施設や家庭等における身体的・心理的虐待、高齢者の家族等による無断の財産処分(経済的虐待)などの人権問題が発生しています。高齢者が安心して生き生きと暮らせる社会にするため、認知症への理解も含めて、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

■障害を理由とする偏見や差別をなくそう

 障害のある人が、雇用の場面や職場において差別待遇を受けたり、店舗でのサービス等を拒否されたりするなどの人権問題が発生しています。「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の趣旨を踏まえ、障害のある人に対する不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供を行うほか、障害のある人を排除しようとする優生思想及び障害のある人に対する偏見や差別の根絶を目指し、誰もがお互いの人権を尊重し合う「心のバリアフリー」に関する取組を推進することにより、この問題についての関心と理解を深め、偏見や差別を解消し、共生社会を実現することが必要です。

■部落差別(同和問題)を解消しよう

 部落差別(同和問題)については、インターネット上の差別的な書き込みや特定の地域を同和地区として指摘する書き込み、結婚・交際、就職及び職場における差別、差別発言、差別落書き等の人権問題が依然として存在しています。「部落差別の解消の推進に関する法律」の趣旨及び同法第6条に基づく調査の結果を踏まえながら、新たな差別を生むことがないように留意しつつ、真に問題の解消に資するものとなるよう、内容や手法等に配慮した啓発活動を展開し、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。
 また、部落差別(同和問題)の解消を阻む大きな要因となっている、いわゆる「えせ同和行為」を排除するための取組を行っていくことが必要です。

■アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう

 「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」では、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念が定められています。先住民族であるアイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会を実現するため、同法の趣旨を踏まえ、アイヌの人々の歴史、文化、伝統及び現状に関する認識と理解を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

■外国人の人権を尊重しよう

 外国人であることを理由とした就職差別、アパートやマンションへの入居拒否などの人権問題が発生しています。また、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がヘイトスピーチと呼ばれ社会的な関心を集める中、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の趣旨を踏まえ、その解消に向けた取組を推進していくことが必要です。
 多様な主体が互いに連携し、支え合う共生社会を実現するため、文化、言語、宗教、生活習慣等の違いを正しく理解し、これらを尊重することが重要であるとの認識を深めていくことが必要です。

■感染症に関連する偏見や差別をなくそう

 エイズ、肝炎、新型インフルエンザ等の感染症に関する知識や理解の不足から、日常生活や、学校、職場等、社会生活の様々な場面で差別やプライバシー侵害などの人権問題が発生しています。感染症に関する正しい知識を持ち、正しい情報に基づく冷静な判断が重要であるとの理解を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

■ハンセン病患者・元患者及びその家族に対する偏見や差別をなくそう

 ハンセン病対策については、かつて採られた強制隔離政策の下で、患者・元患者のみならず、その家族に対しても、社会において極めて厳しい偏見や差別が作出・助長され、今なお存在することは厳然たる事実です。
 ハンセン病患者・元患者及びその家族が置かれてきた境遇を踏まえ、ハンセン病についての正しい知識を持ち、この問題についての関心と理解を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

■刑を終えて出所した人及びその家族に対する偏見や差別をなくそう

 刑を終えて出所した人及びその家族に対する根強い偏見によって、就職差別や住居の確保が困難であるなどの人権問題が発生しています。刑を終えて出所した人の円滑な社会復帰を実現するためには、本人の強い更生意欲と併せて、周囲の人々の理解と協力が重要です。この問題についての関心と理解を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

■犯罪被害者及びその家族の人権に配慮しよう

 犯罪被害者及びその家族が、興味本位のうわさや心ない中傷等により名誉が傷つけられたり、私生活の平穏が脅かされたりするなどの人権問題が発生しています。犯罪被害者及びその家族の立場を考え、この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

■インターネット上の人権侵害をなくそう

 インターネット上で、他人を誹謗中傷したり、個人の名誉やプライバシーを侵害したり、偏見や差別を助長したりするような情報を発信又は拡散するといった悪質な事案が多数発生しています。このような情報の発信又は拡散は、同様の書き込みを次々と誘発し、取り返しのつかない重大な人権侵害にもつながるものであり、決してあってはなりません。
 責任ある情報発信を行うためには、個人の名誉やプライバシー、インターネットを利用する際のルールやマナーに関する正しい知識と理解を深めていくことが必要です。

■北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう

 「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」では、我が国の喫緊の国民的課題である拉致問題の解決を始めとする北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が、国際社会を挙げて取り組むべき課題とされています。この問題についての関心と認識を深めていくことが必要です。

■ホームレスに対する偏見や差別をなくそう

 「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」により、ホームレスの自立の支援等に関しては、ホームレスの人権に配慮することが定められています。この問題についての関心と理解を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

■性的マイノリティに関する偏見や差別をなくそう

 性的マイノリティであることを理由として、社会の中で偏見の目にさらされ、職場で不当な扱いを受けたり、学校でいじめられたりするなどの人権問題が発生しています。「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」の趣旨を踏まえ、この問題についての関心と理解を深め、偏見や差別のない共生社会を実現することが必要です。

■人身取引をなくそう

 人身取引(性的サービスや労働の強要等)は、重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められています。この問題についての関心と理解を深めていくことが必要です。

■震災等の災害に起因する偏見や差別をなくそう

 震災等の大きな災害の発生時において、不確かな情報に基づいて他人を不当に取り扱ったり、偏見や差別を助長するような情報を発信したりするなどの行動をとることは、重大な人権侵害になり得るだけではなく、避難や復興の妨げにもなりかねません。正しい情報と冷静な判断に基づき、一人一人が思いやりの心を持った行動をとれるよう呼びかけていくことが必要です。
 また、災害対応時においては、男女共同参画の視点を持つことも必要です。

ゲノム情報(遺伝情報)に関する偏見や差別をなくそう

 「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」により、今後、ゲノム医療が普及し、ゲノム情報の活用が拡大されていくことが見込まれます。その中でゲノム情報(遺伝情報)に関する知識や理解の不足から、日常生活や、就職、保険の加入等の社会生活の様々な場面で、不当な差別やプライバシー侵害などの人権問題が発生するおそれがあります。ゲノム情報(遺伝情報)に関する正しい知識に基づいて冷静に判断することが重要であるとの理解を深めていくことが必要です。

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  • 【ぺージID】P-21105
  • 【更新日】2025年8月26日
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